結局、新たな価値観が「お金」に対する誤解を解くことがなかった2018年

2018年最後の日です。この一年を振り返ってみると、「お金」に対する誤解が実体経済に悪影響を与え、日本だけでなく世界中で格差を拡大していく元凶になっていることが明確になった年だなと思います。インターネットの普及により、実社会に影響を与えるようになってきた若手インフルエンサーが注目されていますが、そんな彼らでもこの流れは変えられないのかと悲観的な気分になっています。

お金、現金

「新世界の創造主」が作る世界は理想郷ではない

キングコングの西野亮廣さんが出演した回の『アメトーーク』は、『激動の同期芸人』と題し1999年にデビューした同期芸人たちが集い、それぞれが近年の活動を振り返るものでした。その中でもっとも注目されたのが西野さんで、クラウドファンディングで集めたお金で作った絵本がベストセラーになり映画化も進められるなど、芸人の枠を超えた活躍で司会の東野幸治さんから、「新世界の創造主」と称されるほどでした。

西野さんについての認識は、このテレビ番組と著書の一部を読んだだけなので誤解があるかもしれません。かといって著書を1冊読む気にもならないのが正直なところなので、その範囲内で感想を述べることをご了承ください。

まず、数カ月こもって絵本作成に没頭したエピソードは好感が持てるものでした。クラウドファンディングでお金を集めるだけでなく、自らクリエイターとして妥協のないモノ作りに挑む姿勢は頭が下がります。また、これまでの「働いて会社からお金をもらう」生き方ではなく、クラウドファンディングがそうであるように、「会社や銀行を介さないでお金を得る」方法があることを示し、実践していることも「稼ぎ方」の選択肢を広げる有意義なことだと思います。そんなクラウドファンディングで生活している後輩芸人のことを『新世界』で紹介しています。

「1時間50円」で1時間を提供し、実際に50円で1時間を買った人は芸人に草取りを依頼し、「50円じゃ悪いから」といって食事をごちそうしたり、お小遣いを渡したりします。さらにそこから人脈が広がることで仕事の幅が広がり、その後依頼者の女性と結婚するにいたるという思いもよらない展開になったといいます。確かにそのような生き方は、これまでの会社員では息苦しさを感じる人たちにとって救いになるかもしれません。

でも、それだけの行動力がある人であれば、どんなことをしてでも生きていけるような気がします。西野さんだけでなく、昨今注目されている若手のインフルエンサーたちは、「考えないでとにかく動こう」と説きます。それは正しいと思いますが、「動かない奴はダメな奴」との変なプレッシャーにならないかと危惧します。

そんなプレッシャーに駆られた人たちが、渋谷のハロウィーンイベントやテレビ収録の遊園地に詰めかけたり、YouTuberとなり妙な高揚感で非日常的な行動に走ったりしているような気がします。「これまでの価値観では生きていけない」とは彼らからよく聞きますが、「これまでの価値観でも生きていける」社会を作るべきなのではないでしょうか。

違う価値観に不寛容な若手インフルエンサー

西野さんをはじめ、昨今注目されている若手インフルエンサーに期待していました。彼らの出す著書は軒並みベストセラーになり、これまでの価値観に捉われない「新たな潮流」を生むと思ったからです。確かに一部の人たちに熱狂的に受け入れられ、新たな価値観を生み出しているように感じます。かといって、彼らが一様に批判する「高学歴→大企業・公務員=幸せ」が覆ることは当分なさそうです。というより、その価値観が覆ってしまう日本が理想郷になるとは到底思えません。

彼らは高学歴→大企業コースを批判すると同時に、家や車などの所有に対しても批判的です。家や土地は買ったと同時に値段が下がり始めるし、車は公共交通機関やシェアリングを利用すれば所有する必要はないからです。彼らは「お金を使うなら投資のために」と説きます。教育などの人材育成も投資の一部ですし、新たな価値を生むための投資がさらなる富を生み出すからです。

それは決して間違ってはいませんし、いわゆる「意識高い系」の生き方として尊重したいと思います。でも、誰もがそのような生き方に居心地の良さを感じるわけではありません。これまでの日本的な価値観で生きることが自然と感じる人もいます。そんな人たちを一括りに、「ばか、あほ」と著書のタイトルに付ける傲慢さには正直うんざりしてしまいます。彼らの中には、一人の女性と結婚して子どもを持つという人類が築き上げてきた価値観でさえ、「自己実現のために邪魔」と公言する人もいます。そんな人たちから影響を受けた人たちが、より良い日本や社会を作っていくことが可能なのでしょうか。

新たな価値観が「お金」に対する誤解を解くことがなかった2018年

今の時代、集客できるインフルエンサーにはお金が集まってきます。そんな彼らから、貧困問題についてまともな意見を聞くことができないのは当然なのかもしれません。いわゆる「勝ち組」の彼らには、「お金を稼げないのは自己責任」との意識が根底にあるように感じます。

中には「ベーシックインカム(BI)」の導入に賛成する人もいますが、結局は財源問題の解決策で行き詰っているようです。彼らが提唱する新たな価値観では、確かに努力や工夫によって新たな稼ぎ方を見つけられるかもしれません。でも必ずそこからあぶれる人はいて、むしろそちらの方が大多数ではないでしょうか。結局日本人のほとんどが、会社に雇われないと生きてないのが実情なのです。いくら彼らが「自由な生き方・稼ぎ方」を提示し、人々に感銘を与えようとも、そんな生き方・稼ぎ方ができるのは1割にも満たないでしょう。

むしろ、若手インフルエンサーには、「お金」に対する誤解を解く活動を期待しています。彼らからは一様に、一般的にあるようなお金に対する執着は感じられず、自己実現のためのツールとして捉えているのは正しいと思います。一方で、高価な車や服などは嗜好品でしかなく、安く機能的なものを好む傾向にあり、モノが安くなるデフレは歓迎しているのかもしれません。ZOZOの前澤氏は別ですが。

しかし残念ながら、国家の財政に対しては「税収に制限される」との認識からは逃れられていません。高齢化社会になり社会保障も限界にきているとの思いは共通しているようで、そのために「国家<自分」の意識が強く、それが自己実現をするための原動力になっているのではと思えるほどです。

まとめ

結局彼らも、お金が金(ゴールド)の量に制限されていた金本位制の時代の呪縛に捉われたままなのです。金本位制の下では、生産量が増えてもお金が増えないのでお金の価値が高まり、極度のデフレに陥り世界大恐慌を招きました。そんな失敗を現在でも繰り返しています。日本をはじめ先進国では政府の借金の多さに国債の発行が制限されているため、国債を大量に発行できない(市場に出回るお金が増えない)ためデフレぎみになり、世界経済の成長が減速しています。極度のインフレ・金利上昇(通貨の信用低下)を招かない限り、いくらでも国債発行(通貨発行)ができるという正常な通貨理論が広がらない限り、いくらインフルエンサーが新たな価値観を広めようとも、格差は広がり続けるでしょう。

2019年は、一部の界隈でしか盛り上がらないような新たな価値観ではなく、世界を救えるような正しい「お金」の知識を広められるインフルエンサーの登場を期待しています。それではみなさん、よいお年を!