民主党も壁建設に賛成していた。メキシコ国境線には既に1000キロの壁

トランプ大統領がメキシコ国境に建設を進めようとしている「壁」を巡り、米国議会が紛糾しています。壁の建設費を含む予算案が民主党から承認を得られないため、政府機関の閉鎖が1カ月以上続いていました。トランプ大統領が折れた形で3週間のつなぎ予算案が可決されたため、とりあえず閉鎖が解かれることになりましたが、ただ問題が先送りされただけの状態です。

トランプ大統領が描く壁のイメージ

トランプ大統領は壁の建設を諦めたわけではない

ほとんどのメディアでは、つなぎ予算の成立のためトランプ大統領が譲歩したと報道されています。確かにその通りですが、それが壁の建設を諦めたことを意味しません。さすがに空港職員など重要な部門での閉鎖や無給状態が続くと人手不足が深刻化し、経済に与える影響が大きくなったため仕方なく建設の予算が含まれないつなぎ予算を通しました。

しかし、今後3週間は与野党が協議を続け、トランプ大統領が国境警備を巡る協議で満足いく結果を得られなければ、政府機関を再度閉鎖することも辞さないとの構えを鮮明にしています。マルバニー米大統領首席補佐官代行はメディアで、「トランプ大統領は壁建設費確保のため大統領権限を行使する」と述べ、国家非常事態宣言などの強行措置に踏み切るとの見方を示しています。

今後も続く共和党と民主党の壁を巡る対立

トランプ大統領はメキシコ国境への壁建設は選挙公約のため、決して撤回することはできません。共和党の支持者も約9割が壁建設に賛成しているため、撤回することで支持率を大きく失うことになります。一方で民主党の支持者の多くが壁建設に反対しているため、民主党議員は壁建設を容認することができません。どちらの党にも引けない理由があり、また民主党が多数の上院と、共和党が多数の下院でねじれ状態になっているため、今後どちらかが妥協することは難しいでしょう。

それでも、どちらも引かず政治が機能不全になってしまうと国益を大きく損ねるため、57億ドルの巨額な建設費の削減や、民主党が提案する壁以外の国境対策を検討するなどで妥協点を探る可能性もあります。共和党、民主党とも不法移民が増えることは問題だと考えているため、何かしらの対応が必要との認識は共有しています。

トランプ大統領以前にも壁の建設は進んでいた

日本では、トランプ大統領が思いつきで国境に壁を建設しようとしている、というイメージがありますが、トランプ大統領が誕生する以前に、すでに壁は一部で完成しています。ブッシュ政権のとき、国境に沿って1000キロに渡りフェンスを設置する「2006年安全フェンス法」が議決され、フェンスや壁など物理的に国境を遮る構造物の建設が進められました。しかし、これまでの壁では密入国対策としては不十分と考え、国境線約3000キロ(ほぼ北海道から沖縄の距離)に渡り高さ約9メートルの壁を建設しようとしているのがトランプ大統領です。

2006年安全フェンス法には、当時のオバマ前大統領、バイデン前副大統領、クリントン元国務長官など民主党議員も賛成していました。その民主党が今になって反対に回るのは、巨額な建設費や、それに対し十分な効果が期待できないこと、またトランプ大統領の公約不履行を攻撃し、次回の大統領選有利に進めたい思惑などがあります。

確かに現状のフェンスでは、飛び越えたり破壊したり、下にトンネルを掘ったりするなど不法移民対策としての効果が疑問視されています。巨額なコストをかけて強固な壁を築いたとしても効果が不明なため、「無駄遣い」の声も大きいのが現状です。

まとめ

個人的には、国境の壁の建設に対しては賛成も反対意見もありません。ただ、景気対策としての効果や、トランプ大統領の「法的に入国する移民は歓迎する」姿勢は納得できるものだと思います。それに対し、メディアや一部の国民は、壁の是非よりトランプ憎しの感情に流されているように見えます。

トランプ大統領は民主的な選挙で大統領に当選し、その公約を忠実に実施しようとしています。日本のメディアも、これまでの壁を巡る経緯を無視し、トランプが強硬に進めようとしているとのイメージを与えるような報道に終始しているように感じます。少なくとも、「以前から壁は建設されており、民主党も賛成していた」事実は知っておくべきではないでしょうか。