いわゆる「国の借金」が問題ないという可能性さえ検討しないメディアの機能不全

米国でも、「国の借金がGDPの○○%、○○億ドル超え」という声が強くなっています。一方で、THE WALL STREET JOURNALが以下の記事を掲載するなど、いわゆる「国の借金」について「危険水準だ」「問題ない」の両論を示している点でまだ健全だなと感じます。

米政府債務、懸念すべき水準か 議論が再燃

一部の経済学者は米国の赤字財政を気に病む必要はないと説く 米政府の債務残高が拡大する中、一部の経済学者はかつて異端とされていた主張を展開している。それは赤字財政について、それほど心配する必要はないというものだ。

いわゆる「国の借金」ってどうなの?

何度も書きますが、メディアの言う「国の借金」とは政府債務残高のことで、正確には「政府の借金」です。日本では20年以上、「国の借金は○○兆円を超えた」「将来世代に借金というツケを残さないように税金で返さなければならない」と財務省とメディアを中心に叫ばれてきました。結果、ご存知の通りの失われた20年になり、税収が伸びないためさらに政府債務残高が増えるという惨憺たる状況になっています。

米国でも同じような声はありますが、日本ほど強くないためオバマ大統領、トランプ大統領と積極財政を続け、リーマンショックの影響を最小限に抑え、その後の堅調な経済成長を支えてきました。それでもさすがに、急激に伸びる政府債務残高を問題視する声が大きくなってきています。それに対し、現状ではそれほど大きな問題ではないという論調もあることを紹介したのが冒頭の記事です。

「問題ない」という根拠として、以下の理由を挙げています。

しかし、金融危機後に財政赤字と政府債務が急増したにもかかわらず、借り入れコストは依然として歴史的低水準にある。政府債務の対GDP比は、リセッション(景気後退)前の34%から、2018年末には78%に拡大した。その一方で10年物米国債利回りはリセッション前の4%以上の水準から、2.7%に低下している。これは、投資家らが、大量の債券を保有することに懸念を抱いていないことを示唆している。

債権のリスクが高いと市場が判断すれば長期金利が上昇しますが、政府債務が急増したにもかかわらず歴史的低水準にあります。そして著名な経済学者やシンクタンクからも、「今の政府債務残高は壊滅的な水準ではない」との主張がでてきています。

IMFの元チーフエコノミストでもあるブランチャード氏は先月、米国経済学会(AEA)の会合で講義を行い、エコノミストや政策立案者に債務に対する考え方を見直すよう求めた。ブランチャード氏の主張で最も重要な点は、政府債務の金利が経済成長率を下回るならば、債務管理は持続可能だろうという点だ。

市場の声を無視する日本メディアの機能不全

国債の長期金利が低いことで、「米国の国債は安全」と市場が判断していることになります。米国の10年国債金利は約2.7%、成長率は3~4%なのでまだ余裕があると判断可能です。一方で日本は、10年国債金利が0%で成長率は約1%なので、こちらも政府債務残高が安全に管理できているといえそうです。

日本でもインターネットを中心に、いわゆる「国の借金」の嘘が暴かれつつあります。しかし残念ながら、日本の大手メディアでは「国の借金は危険水準だから増税は仕方がない」という既定路線が敷かれており、報道はそこから外れようとしません。

THE WALL STREET JOURNALのように、「政府債務残高は危険ではない」可能性があることさえ言及しないというのはメディアとしてはどうなのでしょう?結論が明確でない事案に対しては両論併記が原則のはずですが、明らかに主要メディアは「国の借金」を煽る側に回っています。それでは「消費増税の軽減税率の対象になるため財務省に逆らえない」と読者から疑いの目で見られても仕方がないのではないでしょうか。

まとめ

「国の借金が大変だ」とメディアが主張し続けてきた期間と、経済成長できなかった失われた20年は完全に合致します。そのことからも、問題がない、いわゆる「国の借金」をことさら大きく取り上げ、日本を成長できない国にしてきたメディアには大きな責任があるはずです。緊縮することなく、20年間他国と同じ程度、年2~3%の成長ができていたら今頃GDPは1000兆円、税収は100兆円、国民の所得は2倍になっていました。メディアとしては、日本にそれだけ大ダメージを与え続けてきたことを決して認めることはできないのでしょう。もう、変われないオールドメディアはダメです。日本には国民が自ら正しい知識を得て、政治を変えていくしか豊かになる道は残されていないのかもしれません。