歩行者が車社会の犠牲に。自動運転車では解決できない問題

欧米各国で、90年代から減少してきた歩行者の死亡事故数が上昇に転じているとの報道があります。


アメリカでは2010年、4302人の歩行者が交通事故により死亡しました。2009年から5%の上昇で、それ以降毎年増加しており、2018年の死亡者は2008年比で41%も増加しました。その間、歩行者以外の交通事故による死亡者は減少しています。ドライバーにとって道路は安全な場所になりつつありますが、歩行者には危険度が増しているのです。

アメリカでは90年代から2009年までは毎年歩行者の死亡事故は減っていました。これは車を運転す人が増える一方、歩行者の数が減ったのが大きな要因です。歩行者の死亡者が多いのは発展途上国の特徴で、交通が近代化されることで徐々に減ってくるのが一般的とされていました。しかしアメリカの2010年以降の統計は、この理論が通用しなくなっています。

この傾向はイギリスや欧州各国も同じで、70~80年代はアメリカと同程度かさらに悪い歩行者の死亡率だった欧州各国は、90年代以降劇的な改善をみせてきました。しかし2010年以降、死亡者数の減少はストップしていまいました。

原因としては、経済状況や歩行者の年齢の変化など、さまざまな要因が考えられます。その中で一つの有力な説が、SUVなど重量車の増加や、車の性能が高まるとともに引き上げられてきた制限速度や、スマホの普及で不注意事故が増えていることなどが考えられます。歩行者事故が多いのは、住宅や会社が多い郊外の高速で走行できる道路です。

将来的には自動運転車が開発され人の不注意による事故が減るといった、テクノロジーが解決することが期待されていますが、過剰な期待ができないのが現状です。近年アメリカでは衝突回避システムを搭載した車が増えているますが、歩行中の死者数は減っていません。メーカーテストでは、一定の条件で回避できたと宣伝しますが、テストとは違う条件で事故が起きた場合、システムが機能する保証はありません。

以上のことは、性能の向上やドライバーの安全にフォーカスした車開発、車がいかにに早く走れるかを優先した道路整備が招いたことではないでしょうか。これからの車社会は、環境や本人の健康にも貢献する歩行者やサイクリストの安全に配慮した交通デザインを重視すべきだと思います。

まとめ

日本はどうかといえば、車に乗車中の人も歩行者も死亡事故は減少しています。しかし、欧米に比べて、歩行中の死亡割合が異常に高いのが気になります。

また、横断歩道で約8割のドライバーが歩行者がいても停まらないというデータもあります。日本ではテクノロジーの発展以前より、ドライバーのモラル改善の方が急務なのかもしれません。