映画『セッション』。天才と凶人の差は紙一重

このブログでも、観たい映画として『カメラを止めるな!』について何度か言及していました。地上波でも放送されましたが機会を逸し、ついに先日、無料お試し期間中のNetflixで観ることができました。何となく本格派ゾンビ映画を期待していたので、コメディー要素の強さに意表を突かれました。

低予算ながら大ヒットし評価も軒並み高く、展開の意外性や考え抜かれたプロットにその理由を感じることができました。しかし、三谷幸喜作品をはじめ、日本のコメディー映画にまったく興味を感じないぼくにとっては魅力的な作品ではありませんでした。

きっと作品としては優れているのでしょうが、個人の好みなので仕方がありません。逆に評価が低くても、ぼくにはたまらなく面白く感じる作品もあります。評価が分かれる映画としては、『セッション』が代表かもしれません。リアリズムの面で不自然さを指摘する批評がありますが、音楽のど素人のぼくにとっては最高に楽しめる映画でした。

2014年公開のアメリカ映画『セッション』は、監督・脚本がデイミアン・チャゼル、19歳の主人公アンドリュー・ニーマンをマイルズ・テラーが演じています。アンドリューのドラムを熱血指導するテレンス・フレッチャーを演じるのがJ・K・シモンズです。

この二人の演技が素晴らしく、フレッチャーの圧倒的なプレッシャーの中ドラムを演奏するシーンはスリリングで息をのみます。マイルズ・テラーは2ヵ月間、一日3~4時間ジャズドラムの練習を続け、撮影では自ら演奏しており、作中の手からの出血はマイルズ本人のものだそうです。(Wikipediaより)演者も命がけです。映像に迫力が出るはずです。

また、フレッチャーのサイコパス振りも凄まじく、アンドリューを含むメンバーたちを精神的に追い詰めます。その指導振りはトラウマになるほど厳しく、教え子のひとりは鬱病になり自殺を遂げます。フレッチャーはメンバーのレベルを最大限高めるためと厳しい指導を正当化しますが、私怨でアンドリューを貶める行為をするなど、明らかに常軌を逸しています。それにもへこたれず、実力と熱意でフレッチャーに認めさせる姿に感動します。

結果的にはフレッチャーの指導がひとりの偉大なドラマーを育てたことになり、パワハラ的な指導法を正当化する危うさもあります。しかし現実社会で成功と失敗を分けるのは、そんな危うさのわずかなバランスなのではないでしょうか。そんな危ういバランスが、この映画の評価を分けているのかもしれません。

ぼくはパワハラを決して正当化するつもりまありませんが、ラストのアンドリューの鬼気迫る演奏にめちゃめちゃ感動しました。そんな神の領域の能力を引き出したのも、間違いなく凶人と化した一人の指導者です。天才と凶人の差は、まさに紙一重なのかもしれません。