遺産をかすめ取る詐欺映画『後妻業の女』。他人の不幸を屁とも思わない人たち

昨日紹介した『しあわせのパン』があり得ないファンタジーの世界を描いた映画だとしたら、リアルな人間の醜さと欲望を描いた対極的な映画が『後妻業の女』です。主演の大竹しのぶと豊川悦司を中心に、笑福亭鶴瓶や永瀬正敏、津川雅彦、尾野真千子といった豪華な顔ぶれが作品を盛り上げます。

大竹しのぶ演じる武内小夜子は、結婚相談所「ブライダル微祥」の経営者柏木亨(豊川悦司)と共謀し、後妻業で荒稼ぎします。結婚相談所は全国に400カ所あり、利用者は60万人に上ります。再婚相手を求めた熟年婚活が増え、独り身の資産家の後妻を狙う後妻業の温床となっているようです。映画では、「金持ちで持病のある高齢男性が人気」と紹介しています。

リアルな生業として存在する後妻業は、遺産をかすめ取る詐欺まがいの仕事です。違法性がなければ表沙汰にならないので実態は見えにくいのですが、Amazonレビューで体験者がいることからも結構な被害者がいるのかもしれません。以下、レビューの一部を引用します。

‘後妻業’の被害にあった者として、
こういった形での警鐘(?)というか存在を世に知らしめた功績は大きいと思います。
補足するならば、世の多くの詐欺がそうである様に、
形や手段がより巧妙で悪質に進化しているという点です。

違法性があったとしても、被害者が世間体を気にして事件として扱いたくない気持ちも分かります。映画では被害者の娘(次女)の異常な執念で詐欺師を追い詰めますが、あそこまでのエネルギーを発揮するのは難しいでしょう。また娘(長女)のように、親が自分で貯めたお金をどのように使おうが自由だとの考えをもつ人もいます。そして、「親を寂しい気持ちにさせた自分たちも悪い」と後ろめたさもあります。最後に親に楽しい思いをさせてくれた加害者に、感謝の気持ちを表す場面もあり、高齢者問題の難しさを考えさせられます。先述のレビューにも、そんな気持ちが見え隠れします。

こういった被害に遭わない為には、
‘孤独を感じている父親’を作らない様に、
いつでも相談に乗れる相手が近くに居るしか無いと思います。
大きい資産が無いとしても、
少々多めの遺族年金が手に入るなら相手は躊躇しませんよ。

とはいえ、相手は自分の利益のためなら、そんな遺族の気持ちを踏みにじることに躊躇しない人たちです。映画ではエンターテイメントとして成立させるためコミカルに描いていますが、被害者の家族の苦悩は相当なもののはずです。理想的なファンタジーの世界は存在せず、世の中には悪党がうようよいることを改めて思い知らせてくれる良作だと思います。