もう一度じっくり観たい『64-ロクヨン- 前編/後編』。とにかくキャストが豪華

2016年公開の映画『64-ロクヨン- 前編/後編』を観ました。原作は横山秀夫の『64(ロクヨン)』で、わずか7日間しかなかった昭和64年(1989年)に起きた、少女誘拐殺人事件を巡る犯罪推理映画でもあり、関係者の心の動きを描いた群像劇映画でもあります。

ストーリーの起点は誘拐殺人事件ですが、当時事件の捜査に当たっていた三上が所属する広報室と記者クラブとの確執、警察内での権力争いと隠蔽、所在不明の三上の娘との関係など絡み合う要素が多すぎて、前知識がない状態で観ると「???」となってしまいます。冒頭の息詰まる身代金の受け渡しを巡る場面から、その後の事件と離れたテーマが進むことに戸惑ってしまいました。

最後まで観ても、省いても良かったのではと思える要素が多い気がします。こんな壮大なストーリーを約4時間にまとめるのは大変だったことでしょう。誘拐殺人事件に絞った方が良かったかもと思ってしまいますが、もっとじっくり観たいと思える濃厚な内容になっています。

とくなく豪華なキャストだけでも見応えがあります。佐藤浩市、綾野剛、榮倉奈々、三浦友和、赤井英和、筒井道隆、吉岡秀隆、窪田正孝、椎名桔平、滝藤賢一、仲村トオル、奥田瑛二、小澤征悦、永瀬正敏、緒形直人、瑛太などなど。娘を持つ身としては、娘が誘拐、殺害される雨宮を演じた永瀬正敏がもっとも印象的でした。

雨宮は、唯一の手掛かりである犯人の声を頼りに電話帳の「あ」行から順番に総当たりで無言電話をかけ続けます。そして犯人の声に辿り着く場面では、感情がこみ上げ叫びうずくまる雨宮に目頭が熱くなります。現実的にそんなことが可能かはさておき、娘を失った悔しさ、悲しさ、怒りをぶつけるにはこんな方法しかなかったのだと思います。「自分だったらどうするか」を考えずにはいられませんでした。

別の映画ですが、「殺人は周りの人まで不幸にする」とのセリフを聞いたことがあります。まさにその通りで、『64』でも当事者だけでなく、捜査に当たった人たちも立ち直れない程の心の傷を与えてしまいました。昨日のエントリーで触れた松本サリン事件の被害者河野さんもそうですが、突然事件の被害者になり理不尽な目に会うリスクがあるのが人生です。犯人への恨みを忘れずに生き続けるのか、河野さんのように犯人を憎まず、自分の家族のため、不幸な被害者を増やさないために体験を生かすのか、自分だったらどうするのかを考えてみるのもたまにはいいかもしれません。