言葉で気持ちを説明するのは最高難度。辞書が好きになる映画『舟を編む』

2013年の映画『舟を編む』を観ました。三浦しをんの小説が原作で、監督は石井裕也、主演は松田龍平。たぶん3回目の視聴。優しい人たちばかり出てくる、安心して観られる映画です。

主人公は出版社の編集部員、馬締(まじめ)光也(松田龍平)。コミュ障ぎみなため営業が苦手で、新しく刊行する辞書『大渡海』の編纂メンバーとして辞書編集部に迎えられます。地道な作業を苦にせず、言葉を集め意味を解く面白さに没頭します。企画から出版までの12年の道のりを、辞書を編纂するかのように淡々と描きます。

昨日紹介した映画『マチネの終わりに』の蒔野聡史と同じく、決して激高しない馬締光也に好感が持てます。厳しい現実があっても受け入れ、腐らず作業を続けます。恋心を抱く林香具矢(宮﨑あおい)とのやり取りは必見です。「相手の心は分からない」ことを前提に、言葉を駆使してお互いの思いを伝えます。

話が苦手な馬締は手紙に思いを綴りますが、達筆すぎて理解できない香具矢が必死に理解しようとします。そんなもどかしさを馬締に言葉でぶつけるシーンは、書き言葉と話し言葉の面白さを浮き彫りにします。

また、「右」の説明は頭の体操にも最適です。忘れやすいぼくでも、方角を利用した説明は何となく覚えていました。いろいろな言葉を、「自分だったらこう説明する」と頭でイメージするのは、面白い作業です。映画を観ると、辞書が少し好きになる素晴らしい映画だと思います。